登記はできますか?
開業して早1ヶ月がたちました。
その間に開業のお祝いやメッセージなどいただきました。この場で感謝申し上げます。
それ以外では何をする訳でもなくあっという間に過ぎたわけですが、ありがたいことに「何をお願いしたらよいの?」という声掛けを頂きました。
ほとんどの方は行政書士という仕事は実際何ができるのかについて知りません。
私も会社員時代には全く縁がありませんでした。
ですので今回からよく聞かれたことを中心に解説して少しでも行政書士または士業の仕事をお伝えしようと思います。
最初によく聞かれたのは「登記はできますか?」です。
先に行政書士は登記についてお答えしますと登記を依頼されてもできません。
登記に関してはほとんど不動産登記についてのことですが、不動産登記法上はご自身で行うことが原則となります。
昔は、商業登記の1つである会社設立の登記をしている行政書士はかなりの数いましたが、違法行為であることが明確になりました。
行政書士は、代理人として登記を申請することはできないのです。行政書士は、登記の書類を作成することもできません。
ここではよく聞かれる不動産の登記についてですが、そのルールは、『不動産登記法』という法律です。
誰が登記がするのかを、不動産登記法を確認しましょう。
不動産登記法 第47条
新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、
その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。
2 ・・・・・・
建物の所有者は、自分で登記をしなければならないと明記されています。
不動産登記法 第57条
建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。
表題部所有者又は、所有権の登記名義人は、建物の所有者を指します。
所有者が申請をしなければならないと、明記されています。
不動産登記法 第74条
所有権の保存の登記は、次に掲げる者以外の者は、申請することができない。
一 表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人
二・・・・・・
申請できるのは、所有者や相続人ですと、明記されています。
不動産登記法 第60条
権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。
権利に関する登記は、
- 住宅ローンの融資などを受ける際に行う『抵当権設定登記』
- 売買の際に行う『所有権移転登記』
などを指します。
登記権利者は、登記をしてもらう権利を有する者
登記義務者は、登記を行う義務を負う者
- 抵当権設定登記の場合、
融資を受ける人が、抵当権設定登記をしなければいけない登記義務者、融資を行う金融機関(銀行など)は登記権利者です。
- 売買による所有権移転登記の場合、
不動産を売る人は、所有権移転登記をしなければならない登記義務者、買う人は、登記権利者です。
『不動産登記法 第60条』を、わかりやすく説明すると、抵当権設定登記は、お金を貸す金融機関と、お金を借りる人は、共同で申請しなければならない。
売買による所有権移転登記は、不動産を売る人と、買う人は共同で申請しなければならない。
ということです。
司法書士に依頼しなければならないとは、どこにも書かれていません。
不動産登記法より、登記は、自分で行うことが原則であることがわかりますね。
このような条文は、登記の種類毎にあります。
全ての登記は自分で行うことが原則です。
でも、ほとんどの人は登記って難しそう、自分でするのは面倒くさいなどから誰かに代わってやって欲しいと考えます
そこで司法書士法で
司法書士法 第三条
司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、
次に掲げる事務を行うことを業とする。
一 登記又は供託に関する手続について代理すること。
二 法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第四号において同じ。)を作成すること。ただし、同号に掲げる事務を除く。
三・・・・・・
また土地家屋調査士法で
土地家屋調査士法 第三条
調査士は、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一 不動産の表示に関する登記について必要な土地又は家屋に関する調査又は測量
二 不動産の表示に関する登記の申請手続又はこれに関する審査請求の手続についての代理
三 不動産の表示に関する登記の申請手続又はこれに関する審査請求の手続について法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第五号において同じ。)の作成
四・・・・・・
このことから不動産登記の表示に関する手続きは土地家屋調査士が、それ以外の登記に関しては司法書士ができるとなります。
他人の依頼を受けて、報酬を得て、不動産の登記を行うことができるのは、
- 表示に関する登記は、土地家屋調査士、
- 表示に関する登記以外は、司法書士、
司法書士、土地家屋調査士に依頼しなければならないという法律はありません。
そして、もう1つの重要なポイントは、『業』です。
業であれば、司法書士や土地家屋調査士でなければなりませんが、業でなければ、誰でも、他人からの依頼を受けて登記の手続きができます。
ですから、家族や、友人、知人が、報酬を得ずに、あなたの代わりに登記の手続きを行うことが可能なのです。
※登記ではなく、他の業務等で報酬を得ると、登記で報酬を得ていると見なされる可能性がありますので全くの無報酬で行う必要があります。
また他の士業は無報酬でも代わりに登記の手続きをすることはできません。
このように士業の中でその資格者しかできない業務を独占業務といいます。
これらは法律の中で厳しく決められています。
士業の中にはこの独占業務を持つ業務独占資格とその資格の名称を独占的に使うことができる名称独占資格とに分けることができます。
次回はこの士業における独占業務についてお話しようと思います。
それによって行政書士ができること、他士業との関わりなどを理解することができると思います。